実際の住宅リフォームの進め方

契約の結び方と書面の確認  書面が全てを決定する、アフターケアにも気を配ろう!

じっくりと時間をかけ、最終的に頼む業者を決めたら、いよいよ契約です。ここでは契約時に気を付けることを挙げていきたいと思います。

 

●契約は必ず書面で交わすこと

小規模な工事だと、工事請負契約書を交わさず、口約束だけで工事を発注してしまうことも多いようです。口約束ではトラブルの際、言った・言わないの水掛け論になってしまい、主張が通らず泣き寝入りすることになってしまうかもしれません。

工事請負契約は「工事請負契約書」「請負契約約款」「設計図書」「請負代金内訳書」の書類の四点が基本セットです。

「工事請負契約書」

リフォーム工事について、発注者と業者の両当事者、施工場所、工期、支払金額、支払方法などの契約内容を取り決めた書類です。

「請負契約約款」

工事を円滑にすすめるための条件などを詳細に取り決めた書類。契約書を補足する意味合いもあります。

「設計図書」

工事の内容と範囲の「設計図面」、図面では表現できない材料の種類・規格・型番や施工方法などを定める「仕様書」、各部ごとに仕上げ内容の要点を整理した「仕上表」など。壁紙の張り替えや外壁の塗り替えだけなどの場合は図面がないのが普通ですが、増改築など建物の構造に手を加えるような場合には図面が必須です。

「請負代金内訳書」

見積書の確定版。使用する設備・部材の種類・型番・メーカー名・数量・単価・金額などを記載し、工事の内容を確定する書類です。通常、請負代金内訳明細書とセットになります。業者によって名称が変わり、見積書、見積明細書、見積明細内訳書などになっている場合もあります。

消費者保護の観点から日本弁護士連合会が作成した約款を

http://www.j-reform.com

からダウンロードできます。

実際の業者は独自に作成した請負契約書や契約約款の書式を用いることが多いので、この約款を参考に比較してみるとよいでしょう。不利な条項がないか、契約内容をよくチェックして下さい。

ここでも6W2H が役に立つ!

皆さん、心構え編で紹介した6W2Hは覚えているでしょうか。工事請負契約書をチェックする際もこれが大変役に立ちます。

○WHO 誰が〈発注者)

あなたの氏名や住所に間違いはないかを確認。

○WHOM 誰に(業者〉

社名や住所に間違いはないかを確認。社印と代表者印が押されているかも忘れずに。

○WHERE どこを(部位〉

工事の範囲に間違いはないかを確認。頼んでない工事や頼んだのに抜けている工事がないかを確かめて下さい。頼んでない工事では無駄な出費、抜けている工事では別途工事や追加工事として新たに出費が発生します。請負代金内訳書、設計図書の内容を重箱の隅をつつく勢いで確認して下さい。

○WHAT 何で(部材・設備)

○HOW どのように(仕上げ)

部材や設備、仕上げは打合せどおりかを確認。請負代金内訳書、設計図書の内容をよく確かめて下さい。契約後に工事内容を変更すると、工期が延びたり費用が増えたりします。

○WHYなぜ(狙い)

あなたのリフォームの目的です。この段階でブレてることはないでしょう。

○HOWMUCH いくらで(費用)

総額と請負代金内訳書は最終的に合意した見積書と同じ内容かを確認。支払時期や方法も忘れずに。さらに請負代金内訳書に含まれない別途費用がないか、廃棄物の処理方法や費用が含まれているかについても必ず目を通しておきます。ここまで来て、業者を疑うわけではないのですが、前金で全額を支払うのは万が一の為にヤメておきましょう。

WHEN いつ〈工期)

着工日、竣工日、引渡日は具体的に書き込まれているかを確認。大規模なリフォームで仮住まいをするような場合は、充分余裕をみておくべきです。

信頼できる業者であっても、最低限の約款は押さえておくこと

ほぼ、おそらく、たぶん、いや絶対わざと、とてつもなく小さい字ですさまじい量が書いてある約款。「こちらに不利なことが書いてあるのでは」と勘繰りたくもなります。メンドイので読み込まないでしょうが、契約書に判を押してしまうと約款の内容が拘束力を持つことになります。内容を吟味して、納得できないことは業者に質問したり、話し合ったりしましょう。

先程も紹介した約款と見比べてみるのが参考になると思います。

http://www.j-reform.com

この約款は消費者保護の観点から日本弁護士連合会が作成したものです。この約款と違っている部分をチェックしてみましょう。面倒くさくても、最低限、次の三つだけは確認が必要です。

第一・遅延損害金

工事の完了が遅れた場合には業者が、請負代金の支払いが遅れた場合には注文者が負担する金額を定めたものです。住宅リフォーム推進協議会の約款と住宅金融公庫監修の約款は、業者も注文者も年14.6%としています。一部の業者は表現を分かりにくくして、業者だけ有利な率にするなど不平等な内容にしていることがあります。

第二・取疲担保責任

工事完了後に隠れた取庇(欠陥)が発見された場合、無料で補修するという定めです。その保証の範囲、期間について確認して下さい。住宅リフォーム推進協議会の約款では民法に従うとしていますので、木造住宅は5年間、木造住宅以外は10年間となります(民法第六三八条)。民間(旧四会)連合協定と住宅金融公庫監修の約款では、木造住宅は1年間、木造以外の住宅は2年間です。最低でも1年以上、できれば民法並みの期聞が欲しいところです。

取庇担保責任とは別に、暇庇に該当しない場合も含めて保証書などで業者独自の保証内容を定めていることがあります。こちらも要確認です。

第三・紛争の解決

当事者間で紛争が起きた場合の解決方法について、定めたものです。裁判所の調停や裁判、弁護士会の斡旋や仲裁、建設工事紛争審査会の調停、斡旋、仲裁などがあります。これらの紛争処理機関の場所(管轄)をどこにするかは、住宅リフォーム推進協議会、民間(旧四会)連合協定、住宅金融公庫のいずれもが建築現場所在地としています。業者によっては、本社所在地を指定している場合もありますので、建築現場所在地へ変更してもらいましょう。

法律に違反しない限り、契約は当事者の合意で成立します。契約書や約款の内容は業者ごとに違い、業者側に有利な内容になっていることも少なくありません。契約当日に説明を受けても、理解できない点がいくつも出てくるハズです。契約書類一式のコピーをもらうか、一旦預かって吟味し、疑問点があれば遠慮なく質問して下さい。納得できない点は契約書の文言を変更してもらうよう話し合いましょう。法律に違反する内容でない限り、当事者の合意があれば契約内容の変更は可能です。

契約内容をよく確認し納得したら、同じ内容の二通の契約書にはんこを押します。両方の契約書に契約金額に応じた収入印紙を貼りますが、片方はあなたの負担となります。あなたと業者がお互いに契約書を一通ずつ保管します。

業者選びも、契約も、完了しました。これからいよいよリフォームの工事です。今から、仕上がりが楽しみです。